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文藝新都作品レビュースレ★2

363 :以下、VIPにかわりまして新都社でお送りします。:11/08/28 00:27:49 ID:LK6Lewxe
>>362
作者です。レビューありがとうございます。
とても嬉しく拝見しました。

黙々とレビューを続けておられる姿勢に共感して、
私もレビューの真似事を。
やたら長々しくなってしまいすみません。


「夜に踊る光」宵野夏


前作(サザン・ダンス)と併せて、宵野先生の文章は、一息がとても長いです。
言葉が並べられていく様子が、それでもかえって静かなのが不思議です。
前作では「水の中を一蹴りで遠くまで泳いでいくみたいな文章」だと感じたのですが、
今回はわりと饒舌な印象を受けました。でもうるさくはないです。
あまり圧力を感じないというのでしょうか。
絞り出す必死さを持っているくせに無気力な文章が、この短編にうまく添っていると感じました。

リアルなディティールで覆い尽くされていて、
ストーリーよりもそういう要素が短編としてのかたちを支えている印象です。
宵野先生の性別と年齢を考え込んで混乱してしまうくらいリアルです。
ただそのディティールで少し気になる点も。
仕事の失敗がささやか過ぎるのでもっと社会人的理不尽さが滲み出てもいいなとか、
従妹の娘が歩く時期だとか(三歳ってとっくに歩いている時期だと思うので)、
そんな細かいところなのですが。
無責任な情事についても典型的な描写に感じたので、
もっと不穏な悪意が含まれていれば読後感がざらっとするかなと思うのですが、
それは「私がもしこれを書いたら…」という想像に基づく感覚でしかないですね。
更に言えばこういう着想は出来そうにないので完全にifの話です。
むしろこのさらさらと引っかかりのない、
凡庸で手応えがないくせに自分を削り取っていくもの、というあり方が
ここでは意味を持つのだろうか、と考えたりしました。
その「さらさら感」はすごく重要なものだとは感じるのですが、
弟についてはもう少しだけ触れて欲しかったかも。そのさらさらを保ったままで。

そして主人公の年齢、「二十八歳」が少しそぐわないように感じました。
今の二十代って、こういう「削り取られていく感覚」を
高校生くらいから感じているんじゃないのかな。と、私は思います。
高校時代のエピソードは、現在三十代半ばよりも更に上くらいの女性を想像してしまいました。
夢見る乙女でいられるのは中学生までなのかな、と。
私の高校時代が機能障害に陥っていただけでしょうか。
あるいは時代設定が現在ではないのかもしれませんが、
これは三十代半ば女子(敢えて女子)でも十分に成立して、且つ妙にリアルになる気がします。

「サザン・ダンス」でも感じたことですが、
言葉の波に引きずり込んで引っ張っていくのがとても上手い。
それは勢いで無理矢理引き離すというよりは、
気がついたら息を詰めて静かに併走しているような引っ張り方なのです。
最後の二つの段落のテンションの張り詰め具合は素敵でした。
こういう部分があると、何かしら「文章を読んだ」という満足感を頂けるので、
読み手としては嬉しくなります。
言葉のリズムと心のリズムがうまく一致しているのだと思います。

「いつもそうだが、私たちは話したい言葉を使うことが許されていない。」
そんな、混乱した闇の中でのもどかしい息苦しさに同調できる短編でした。

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